往生極楽院(2024年)四曲一双 個展「古都の静寂」
大原の三千院は四季を通じて美しいが、声明の聞こえてくるような情景を表現したいと思い、冬に写生に出かけた。有清園は、杉木立に苔、裸木となった木々、そして往生極楽院と、春や秋とは違い色彩が抑えられた世界だった。声明を伝えてきた地としての私の中のイメージと一致し、色彩のないこの季節を特に選んで描いた。
「叢林」(2022年)四曲一隻 第3回NIHONGA〇
ビハール州パトナーからヴァイシャリーに向かっていた時のことである。ガンジス河に架かる橋をバスで1時間ほどかけて渡った対岸に、バナナ畑が広がっていた。前日から降り続いた雨が霧となり、どこまでも続くバナナ畑を包んでいた。晴天の日の乾燥した暑い空気とは違い、湿潤な空気が肌に優しく感じられた。その情景を、アルミ地に水墨表現を用いて描いた。
「一木の影」(2021年)182.0cm×640.5cm 第10回ArtistGroup-風-入賞
線と円-第27回尖×第2回NIHONGA〇-
おぶせミュージアム・中島千波館蔵
ガンジス河は、ヒマラヤの氷河に水源をもつ。聖地ㇵルドワールは、氷河がとけて平野に流れ出る場所に位置する。ここにあるベンガル菩提樹の大木を描いた。この絵では足の悪い盲目の男が、物乞いをしにガンジス河畔を訪れている。粗末な衣をまとい、恥を忍んでたたずむ男を、救うかのように大木が包み込んでいた。ガンジス河の反照として、アルミ箔の切り廻しを全面に押している。
「砂と河」(2020年)180cm×630cm 第9回ArtistGroup-風-入賞
第8回東山魁夷記念日経日本画大賞展入選
おぶせミュージアム・中島千波館蔵
ヴィンダヤーチャルは、ベナレスから西に75キロ程行ったところにある田舎町である。予備知識のないまま訪れたものの、行ってみると点在するテントと何艘かのボートがあるだけだった。立派な建築群や華やかさを期待していた私は、「何もない」風景に初めはがっかりした。しかし、写生をするうちに私自身が変化していった。河に祈るために必要なものは、目の前の簡素なテントで充分だと思えた。人々の生活に根差した信仰の姿をここで知った。
「ガンジス河畔」(2019年)
160㎝×140㎝(100F変)
Seed山種美術館日本画アワード2019入選
「ベナレスの沐浴場」(2019年)180cm×540cm 第8回ArtistGroup-風-入賞
個展「ガンジス河を巡る」
ベナレスの沐浴場(ガート)は、ガンジス河の水で身を清め、祈りを捧げるインドの人々にとって大切な場所である。ここは、常に多くの巡礼者で賑わっていた。色彩豊かなサリーをまとった女性たち、日に焼けた肌と白い服の男性たち、自由気ままに行き交う牛や犬。インド特有のエネルギーに満ちた色彩が、茶褐色の風景に生命力を与えていた。人々と河とのつながりの深さを感じると共に、救いを求める人々の真摯な姿に圧倒された。
西本願寺水吹き銀杏(2018年)180cm×630cm 第10回TheNIHONGA-伝統と創造-
Ground Zero(2018年)180cm×540cm 第10回TheNIHONGA-伝統と創造-
「ジャロールの木」(2017年)180cm×630cm 第9回TheNIHONGA-伝統と創造-
第6回ArtistGroup-風-入賞
「大河のうた」(2016年)182.0cm×640.5cm 個展「大河のうた」
「住処」(2015年)136cm×364.5cm 個展「大河のうた」